仮面夫婦は仮面を剥ぎ取りたい。〜天才外科医と契約結婚〜
* * *
結局その後、柑奈が迎えに来てくれた。
壱護はまだ仕事が残っていたので戻らなければならなかった。
汗が滲んでいたことを思うと、急いで駆け付けてくれたのかもしれない。その気持ちが嬉しかった。
壱護は今日も夜が遅い。
あんなことがあった後の独りぼっちは心細いけれど、一緒にいて欲しいなんて我儘は言えない。
壱護のことを必要としている人がいるのだから。
明日は美容院やらエステやらメンテナンスの日だったが、気を利かせて柑奈が別日にリスケしてくれてオフになった。
「つ、疲れたぁ」
風呂から上がった杏葉はベッドに向かって思いきりダイブする。
何だか変に気疲れしてしまったせいか、案外眠気はすぐに訪れた。
夢の中で杏葉は幸せだった。
壱護が帰って来てくれて、自分に向かって優しく微笑みかけてくれている。ぎゅっと抱きしめてくれ、心が満たされる。
「壱護、すき……」
杏葉は腕を伸ばして壱護のことを抱きしめ返す。
ふわりと香る、薬品のような匂いも壱護のものだと思うと安心する。
「――随分熱烈な歓迎だな」
「へ……?」
まだぼんやりとしている中、杏葉はうっすらと目を開ける。
本当に誰かに抱きついた状態になっていることを自覚する。
「おはよう」
「――えっ!?壱護!?」