御曹司は初心な彼女を腕の中に抱きとめたい
周囲から見たらふたりで固くなっていただろう。でもその慣れていない感じが今の私たちの関係。ううん、慣れていないのは私だけ。奥山さんはそんなことないはず。きっと私のペースに合わせてくれているのだろう。
「今日は暖かいし、外のキッチンカーで何か買って公園でもいかないか?」
今から向かい合わせでどこかで食事となると緊張はマックスになりそうだった。公園の提案に私はすぐに「はい!」と伝えた。
週末の今日は家族連れやカップルがたくさん来ていた。私たちはたくさん来ているキッチンカーを見て周り、いくつか料理を買い込むと海の見えるベンチに座った。シェアして食べよう、とふたりの間に何品も料理が並んだ。どれも美味しそうでついたくさん買ってしまったが、彼はもっと買おうとしていた。そういえば一緒の食事をした時も大盛を食べていたり、みんなと食べた時も残すことなく平らげていたような気がした。
「奥山さん、これで足ります? もっと買ってきましょうか?」
「大丈夫だ。足りなければまた一緒に見に行こう」
ふたりでベンチで並んでいるとかなり距離は近い。向かい合って食事をするのと、今のように並んで座り、シェアしながら食べるのも、どちらもハードルが高かったのだと初心者の私は初めて知った。
ペンネをフォークでひとつずつ刺して食べていると、遠慮はするなとチキンを私の口に放り込んできた。驚いて顔を上げると、いたずらっ子のような雰囲気で口角が上がっている。思わず口に入ってきたチキンだが、ハニーマスタードの甘さが美味しくてハマってしまいそうだった。
奥山さんは買ってきたものをどんどん食べていたが、合間にさっきのように私の口にも入れてきた。
「ちょっと! 自分で食べられますって」
「遠慮してるだろ? どんどん食べないと俺が食べ過ぎちゃうから入れてあげてるんだよ」
どうやら彼は早食いらしい。そして私の口に放り込んでくるが、反射的に口に入れてしまう私も私だ。でもなんだか周りから見たらイチャイチャしてるみたいなんじゃ、とおもうと恥ずかしくなってきた。
「奥山さんはたくさん食べるのに太らないんですか?」
「そうだなぁ。つきにくい方だとは思う。でも体を動かすのも好きでジムとかたまに行っているせいなのもあるかな」
食べても太りにくいのか。私はすぐに付いちゃうのに。
「この前はごめんな。ぽっちゃりって悪い意味じゃないんだ。ガリガリよりも健康的だし、何より可愛いと思ってつい口に出ただけで……。でも女の子からしたら悪く取るよな」
私は気にしていなかったのに、彼は覚えているくらい気にしていたのだろう。
「ぽっちゃりは本当のことだもん」
「だからみちるちゃんはぽっちゃりじゃない。それにこのくらいの方がいいよ。今の女の子ってみんな痩せすぎ。健康的に見えない」
「でも私だってあのくらいになりたい……」
正直なところ私だって細ければ細いほど可愛いと思っている。でも食べるのが好きだから我慢してまで痩せたいとも思えない。だからぽっちゃりなの。でももうそれで自分を卑下したくないし、見た目で判断する人とはきっと付き合っていけないと分かっている。
「みちるちゃんは太ってない。それに一緒に食べるご飯は美味いし、楽しい。見た目ってそんなに大事? 俺は一緒にいて楽しいからみちるちゃんを誘ってるんだけど」
「……私も、楽しい」
体型の話って結構タブーだけど、彼はそんなのよりも私と過ごす時間が楽しいって言ってくれたことが嬉しかった。映画館で握られた手が緊張していたけど、温かくて安心した。
「みちるちゃんだってこんな見た目の俺とご飯食べてくれるってすごいと思うんだ。あんまり顔を出したくないからいつも隠すようにしてるし。でも楽しいって言ってくれて、ただ素直に俺も嬉しいよ」
「え? 奥山くんの見た目? あー、確かに前髪で隠してるからよくわからないよね。でも気にしてなかったかも。あ、でも目が悪くなるんじゃないかなって少し心配」
「そこ? 結構女子達には気味悪がられるけど」
頭をポリポリとかいている彼はまた時折表情が見えるがすこし恥ずかしそう。
「気味が悪い? あんまり気にならないかな。最初の時もよく食べる人だな、とか思ったくらいで」
「そういうところだよ。普通は怪しいし犬猿するよ」
苦笑いをしながら話す彼はどこか楽しげだ。
「初対面の人にあんまり話かけられるのも気を使うのも苦手なんだ。昔色々あってさ。だから初めて会った日に俺の見た目とか関係なしに話かけてきたみちるちゃんに興味が湧いた」
私の見た目を気にしないのも彼自身の経験があってのことなのだと分かった。私と同じで見た目よりも内面を見てくれる人なのだと感じた。
「とはいえ、みちるちゃんは可愛いからね」
今、見た目じゃなくて内面の話をしたばかりなのにストレートな言葉に胸がドキドキしてきた。
「今日は暖かいし、外のキッチンカーで何か買って公園でもいかないか?」
今から向かい合わせでどこかで食事となると緊張はマックスになりそうだった。公園の提案に私はすぐに「はい!」と伝えた。
週末の今日は家族連れやカップルがたくさん来ていた。私たちはたくさん来ているキッチンカーを見て周り、いくつか料理を買い込むと海の見えるベンチに座った。シェアして食べよう、とふたりの間に何品も料理が並んだ。どれも美味しそうでついたくさん買ってしまったが、彼はもっと買おうとしていた。そういえば一緒の食事をした時も大盛を食べていたり、みんなと食べた時も残すことなく平らげていたような気がした。
「奥山さん、これで足ります? もっと買ってきましょうか?」
「大丈夫だ。足りなければまた一緒に見に行こう」
ふたりでベンチで並んでいるとかなり距離は近い。向かい合って食事をするのと、今のように並んで座り、シェアしながら食べるのも、どちらもハードルが高かったのだと初心者の私は初めて知った。
ペンネをフォークでひとつずつ刺して食べていると、遠慮はするなとチキンを私の口に放り込んできた。驚いて顔を上げると、いたずらっ子のような雰囲気で口角が上がっている。思わず口に入ってきたチキンだが、ハニーマスタードの甘さが美味しくてハマってしまいそうだった。
奥山さんは買ってきたものをどんどん食べていたが、合間にさっきのように私の口にも入れてきた。
「ちょっと! 自分で食べられますって」
「遠慮してるだろ? どんどん食べないと俺が食べ過ぎちゃうから入れてあげてるんだよ」
どうやら彼は早食いらしい。そして私の口に放り込んでくるが、反射的に口に入れてしまう私も私だ。でもなんだか周りから見たらイチャイチャしてるみたいなんじゃ、とおもうと恥ずかしくなってきた。
「奥山さんはたくさん食べるのに太らないんですか?」
「そうだなぁ。つきにくい方だとは思う。でも体を動かすのも好きでジムとかたまに行っているせいなのもあるかな」
食べても太りにくいのか。私はすぐに付いちゃうのに。
「この前はごめんな。ぽっちゃりって悪い意味じゃないんだ。ガリガリよりも健康的だし、何より可愛いと思ってつい口に出ただけで……。でも女の子からしたら悪く取るよな」
私は気にしていなかったのに、彼は覚えているくらい気にしていたのだろう。
「ぽっちゃりは本当のことだもん」
「だからみちるちゃんはぽっちゃりじゃない。それにこのくらいの方がいいよ。今の女の子ってみんな痩せすぎ。健康的に見えない」
「でも私だってあのくらいになりたい……」
正直なところ私だって細ければ細いほど可愛いと思っている。でも食べるのが好きだから我慢してまで痩せたいとも思えない。だからぽっちゃりなの。でももうそれで自分を卑下したくないし、見た目で判断する人とはきっと付き合っていけないと分かっている。
「みちるちゃんは太ってない。それに一緒に食べるご飯は美味いし、楽しい。見た目ってそんなに大事? 俺は一緒にいて楽しいからみちるちゃんを誘ってるんだけど」
「……私も、楽しい」
体型の話って結構タブーだけど、彼はそんなのよりも私と過ごす時間が楽しいって言ってくれたことが嬉しかった。映画館で握られた手が緊張していたけど、温かくて安心した。
「みちるちゃんだってこんな見た目の俺とご飯食べてくれるってすごいと思うんだ。あんまり顔を出したくないからいつも隠すようにしてるし。でも楽しいって言ってくれて、ただ素直に俺も嬉しいよ」
「え? 奥山くんの見た目? あー、確かに前髪で隠してるからよくわからないよね。でも気にしてなかったかも。あ、でも目が悪くなるんじゃないかなって少し心配」
「そこ? 結構女子達には気味悪がられるけど」
頭をポリポリとかいている彼はまた時折表情が見えるがすこし恥ずかしそう。
「気味が悪い? あんまり気にならないかな。最初の時もよく食べる人だな、とか思ったくらいで」
「そういうところだよ。普通は怪しいし犬猿するよ」
苦笑いをしながら話す彼はどこか楽しげだ。
「初対面の人にあんまり話かけられるのも気を使うのも苦手なんだ。昔色々あってさ。だから初めて会った日に俺の見た目とか関係なしに話かけてきたみちるちゃんに興味が湧いた」
私の見た目を気にしないのも彼自身の経験があってのことなのだと分かった。私と同じで見た目よりも内面を見てくれる人なのだと感じた。
「とはいえ、みちるちゃんは可愛いからね」
今、見た目じゃなくて内面の話をしたばかりなのにストレートな言葉に胸がドキドキしてきた。