御曹司は初心な彼女を腕の中に抱きとめたい
「両親が離婚した後、俺は祖父母に育てられた。本当に愛情豊かな人だった。とてもまめな人で動き回っていたのにいつからか椅子によく座っている姿を見かけるようになったんだ。年齢のせいかとあまり気にしていなかったので症状がだいぶ進行するまで気がつかなかった。祖母が体調不良を訴えてからは進行が早かったよ。もう根治治療が望めない状態だった」
両親ではなく祖父母に育てられた話も初めて聞いた。私は彼の腕の中でそのまま聞き入っていた。
「抗がん剤も海外では承認されている物も日本では使えないことも多い。だから俺はあんなに世話になった祖母に最善の治療を受けさせてあげたのかと言われるとそうではなかったと思う。祖母はがんが転移して痛みが強かった。痛み止めだけを使いコントロールするが、その分意識も落としていくんだ、本当に母親のように育ててもらった人との別れがこんなにも辛いとは思っても見なかった。だからこんな思いを少しでも減らしたくて研究を続けているんだ」
彼の強い決意で薬の研究に取り組んだいるのだと感じた。彼にとって大きな存在だった祖母に忘れられてしまうなんて想像するだけで痛ましい。だから彼の新薬への思いは人一倍強いのだろう。
「すぐにできる薬なんてないんだ。社長職を継ぐ日までにできるとは思わない。でも今できることをやっておきたくて泊まり込んでしまっていた。それがみちるの不安を煽るようなことになるなんて」
「本当に蒼生さんが研究に励んでいるって分かっているんです。だから今まではなんとも思っていなかったの。メッセージもまめにくれるし。でも今回のことがわかったら急に研究のせいで私と会えないのではなくて、他に理由があるんじゃないかって疑ってしまったの。私の方こそごめんなさい」
私は彼に頭を下げた。
「自分勝手だったと反省してる。俺の方こそごめん」
彼も私に謝ってきた。
「みちるを好きだから、俺の全てを見てほしい。もう隠し事はしない」
その言葉が不安だった私の心に染み込んできた。やっぱり彼と今日話してよかった。このまま連絡を絶っていたら絶対に後悔していただろう。お互いが他人同士。言葉にしないと伝わらないことや誤解を生じることがたくさんあるのだと身をもって実感した。これからは蟠りを残すのではなくきちんと話合おうと心に誓った。
話は尽きず、お互いの気持ちを確認し合えたことで、今までよりももっと彼を身近な存在に感じられた。
彼が置きっぱなしになっているスウェットを着て、くつろぐ姿を見てホッとした。そして向かいではなく、隣に座ると彼は腰に手を回してきて私を引き寄せた。
「みちる、今度の休みは俺の部屋で過ごさないか? 大して面白みのない部屋だし、みちるの部屋の方がゆっくりできて俺は好きなんだ。でもよかったら来ないか?」
「うん!」
初めての彼の部屋はどんな感じなのだろうと純粋に興味が湧いた。
両親ではなく祖父母に育てられた話も初めて聞いた。私は彼の腕の中でそのまま聞き入っていた。
「抗がん剤も海外では承認されている物も日本では使えないことも多い。だから俺はあんなに世話になった祖母に最善の治療を受けさせてあげたのかと言われるとそうではなかったと思う。祖母はがんが転移して痛みが強かった。痛み止めだけを使いコントロールするが、その分意識も落としていくんだ、本当に母親のように育ててもらった人との別れがこんなにも辛いとは思っても見なかった。だからこんな思いを少しでも減らしたくて研究を続けているんだ」
彼の強い決意で薬の研究に取り組んだいるのだと感じた。彼にとって大きな存在だった祖母に忘れられてしまうなんて想像するだけで痛ましい。だから彼の新薬への思いは人一倍強いのだろう。
「すぐにできる薬なんてないんだ。社長職を継ぐ日までにできるとは思わない。でも今できることをやっておきたくて泊まり込んでしまっていた。それがみちるの不安を煽るようなことになるなんて」
「本当に蒼生さんが研究に励んでいるって分かっているんです。だから今まではなんとも思っていなかったの。メッセージもまめにくれるし。でも今回のことがわかったら急に研究のせいで私と会えないのではなくて、他に理由があるんじゃないかって疑ってしまったの。私の方こそごめんなさい」
私は彼に頭を下げた。
「自分勝手だったと反省してる。俺の方こそごめん」
彼も私に謝ってきた。
「みちるを好きだから、俺の全てを見てほしい。もう隠し事はしない」
その言葉が不安だった私の心に染み込んできた。やっぱり彼と今日話してよかった。このまま連絡を絶っていたら絶対に後悔していただろう。お互いが他人同士。言葉にしないと伝わらないことや誤解を生じることがたくさんあるのだと身をもって実感した。これからは蟠りを残すのではなくきちんと話合おうと心に誓った。
話は尽きず、お互いの気持ちを確認し合えたことで、今までよりももっと彼を身近な存在に感じられた。
彼が置きっぱなしになっているスウェットを着て、くつろぐ姿を見てホッとした。そして向かいではなく、隣に座ると彼は腰に手を回してきて私を引き寄せた。
「みちる、今度の休みは俺の部屋で過ごさないか? 大して面白みのない部屋だし、みちるの部屋の方がゆっくりできて俺は好きなんだ。でもよかったら来ないか?」
「うん!」
初めての彼の部屋はどんな感じなのだろうと純粋に興味が湧いた。