社内捜査は秘密と恋の二人三脚

 私、あのとき本当に自分だけ蚊帳の外で彼のことを知らないのかと思ったら悲しくて、表情や態度に思い切り出ていたかもしれない。最終日だと知っていたし。

「気に入っているというか、少しふたりで探ったりしていたので気心が通じたと言うだけだと思いますけど」

「……まあいいさ。彼は社長が勧めてきた縁談があるのを知ってる?」

 頷いて返した。

「そうか……知ってたんだね。でも、おそらく心配はいらないよ。瞳さんはおそらく鈴村さんとは結婚しないから。あ、瞳さんというのはその縁談相手である氷室商事社長のお嬢さんだよ。僕は彼女のすぐ上の兄である俊樹と友人だから知ってるんだ」

「そうなんですか?」
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