愛の街〜内緒で双子を生んだのに、孤高の副社長に捕まりました〜
そもそも彼女は自分との未来を望まなかったのだから、それは仕方がないことだ。
 
はじめからわかっていたこととはいえ、あまりにも他人事のように龍之介の恋愛事情を口にする彼女がしゃくで、ついからかってしまった。
 
驚き真っ赤になる彼女が、龍之介の中の熱い心を掻き立てた。
 
そんなことなどつゆ知らず彼女は今もこの家の一室で平和な寝息を立てているのだろう。
 
今すぐにでも彼女の元へ行き、愛を乞いたい。

たとえ今はもう愛はなくとも必ず思い出させてみせると、深い愛で包み込み、永遠に続く未来を約束するのだ。
 
だが龍之介はその衝動を抑え込む。
 
あまりにも時期尚早だと思うからだ。
 
彼女はひとりの女性であり、同時に子供たちの母親だ。

ここにいるのは彼らのため、いきなり想いをぶつけて混乱させたくはない。
 
ふたりの関係がこじれるのは、子供たちにとってもよくない。

「まずは子供たちに、俺を認めてもらうところからだな」
 
口に出すと、身体に力がみなぎるような心地がした。それ自体が自分にとって生きる意味だとすら感じる。
 
こんなに明日が楽しみだと思うのはいつぶりかわからないくらいだ。
 
そんなことを考えながら、龍之介はミネラルウォーターを飲み干した。
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