御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
有紗以外にも小さな子を抱える母親や、介護が必要な家族を抱える者、本人自身にハンデがある者もいるが、皆長く働き続けている。

「なにより私たちほんとーに、助かってるんだもん。皆英語苦手でさ。あの天瀬商事に勤めてたって話だから優秀なのは間違いないって言ってたけど、期待以上だったよ」
 
花田文具の万年筆は、国内の愛好家の間ではすでに定評があり、さほど大きくはなくとも経営は安定していた。

だが一年前にロンドン貴族が愛用していることがイギリスで報道されてから状況が一変した。
 
海外からの発注が急増したのだ。会社にとっては嬉しいことではあったがなにしろ語学ができる社員がほとんどいない。

さらに言うと外国との取引も慣れていないため、困っていたという。

天瀬商事での勤務経験があり語学もできる有紗は重宝されているというわけだ。
 
デスクには、有紗の休みの間に来たと思われる海外からの案件の発注書や契約書が置いてある。有紗はさっそく取り掛かった。
 
——午前十一時。
 
一心不乱に取り組み、山積みになっていた分はなんとか終えてひと息つくと、入口が騒がしい。

普段は一階にいる営業社員が二階に上がってきている。

なにかあったのかと不思議に思って見ていると社長の花田まで三階の社長室から下りてきているではないか。どうやら彼が営業社員を二階に呼んだようだ。

「皆ちょっといいかな? 仕事中に申し訳ないが、話があって」
 
皆手を止めて彼に注目する。花田が話し始めた。

「急な発表で申し訳ないが、皆落ち着いて聞いてくれ。我が社は、今日付けで天瀬商事の傘下に入ることになった」
 
気楽な調子でとんでもないことを言う社長に、どよめきが起こる。皆驚き、不安そうに顔を見合わせた。

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