御曹司と再会したら、愛され双子ママになりまして~身を引いたのに一途に迫られています~【極甘婚シリーズ】
この状況をどう受け止めるべきかがわからない。まさかまた天瀬商事で働くことになるなんて。
 
いや会社のことを思えばいいことに違いない。労働条件に関しては、天瀬商事は格段にいい。
 
でも有紗にとっては問題はそこではない。再び龍之介との接点ができてしまうことだった。

子会社の社員と親会社の役員など接点といえるほどのものでもないのかもしれない。顔を合わせることなどないのだから。

それでも不安になるのはどうしようもなかった。
 
龍之介に双子のことを知られたらどうなるのだろう?
 
万にひとつもあり得ないことでも、心配だった。
 
彼の人柄を知る有紗の予想では、内心はともかく誠実に責任を取る行動に出ると思う。

でもなんといっても彼は既婚者なのだ。

周囲を巻き込み誰かを傷つけるのは間違いない。
 
双子の存在は絶対に知られるわけにいかない……。
 
社員のざわざわが収まりかけたのを見計らって、再び花田が口を開いた。

「本当のところ私も迷ったよ。祖父の代からずっと守ってきた会社だからね。だが、このままいくと廃業は目に見えている。どうしようかと考えあぐねていたところ天瀬商事の副社長が、直々に私と話をしてくれてたんだ。副社長は我が社が守ってきた製品の品質を大変評価してくださった。この技術と理念を守ると約束してくれている」
 
その言葉に社員たちが顔を見合わせた。

「天瀬副社長って、あの人だよね。一時期ワイドショーで騒がれてた。ほらハリウッド女優と……とか」

「えー、社長、直接会ったんだ」

「すごーい。いいなぁ」
 
皆口々に自由に言い合う。

「こらこら、皆、思ったことを口に出しすぎだ」
 
花田が苦笑した。
 
完全に和やかムードだが、むろん有紗はそんな気分にはなれない。

言うまでもなく、龍之介の話が出たからだ。

落ち着け、と有紗は自分に言い聞かせる。

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