断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
「いや、いい……とにかくハナコが無事でよかった」

 山田の声、ちょっと震えてる。抱きしめる手もなんだか震えてて、わたしのこと本気で心配してくれてたんだな。
 それにしても、山田あったかい。ひとの熱って、こんなに心地いいもんだったんだ。

 こっちも抱きしめ返したら、山田の背中、なんだかすごく雪まみれで。
 そっか、この穴ちっさいから、山田まで入りきらないんだね。どんなにがんばってもふたりで入るのは無理そうだ。

「あの、シュン様は転移魔法をお使いになれますか?」
「すまない……わたし自身は使えても、ハナコを連れて飛ぶことはできない。強すぎるわたしの魔力では、ハナコを安全に運んでやることができないんだ」
「でしたらケンタを……弟をここに連れてきていただけますか?」

 転移魔法が得意な健太なら、わたしを運ぶのも簡単なはず。

「残念だがそれも無理だ。転移魔法は行ったことのある場所にしか使えない」
「ケンタがここに来るのは無理と言うことですのね……でしたら、シュン様だけでもお戻りになってください」

 話してる間にも、山田の背中にどんどん雪が積もってく。このままじゃ助けに来た山田の方がどうにかなっちゃいそう。

「ハナコひとりを置いていくなど……」
「わたくしなら大丈夫ですわ。ここにいれば一晩くらい寒さをしのげそうですし、吹雪がおちついてからまた迎えに来ていただければ」
「こんな目印もない場所では、転移魔法を使ってもわたしも戻って来られるかどうか分からない。心配するな、わたしはずっとハナコのそばにいる」

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