断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 ふわっと温かい風に包まれて、山田が乾燥魔法を使ったのが分かった。普段ならお風呂上りにするやつだ。
 雪で濡れていた髪も服も一気に乾いて、よりいっそう寒さが和らいだ。

「暗くて不安かもしれないが。少しの間だ、耐えてくれ」

 言いながら山田が背を向けた。よかった、山田の背中もすっかり乾いてる。
 入り口を塞いでくれてるおかげか、暗くても中はとっても快適だ。
 でもそれって、山田が体張って吹雪をブロックしてるってことだよね?

「シュン様、ここにいてくださってとても心強いです……ですからせめてわたくしと場所を変わっていただけませんか?」
「駄目だ、ハナコに寒い思いをさせるわけにはいかない」

 山田の背を押すけどびくともしない。これは言っても聞きそうにないな。

「でしたらわたくしの魔石カイロをお渡ししますわ」
「いや、そのままハナコが持っているといい。魔石が冷めてもわたしの魔力では再び温めてやることはできないからな」
「それとこれとは話が別でございましょう? このままではシュン様が凍えてしまいますわ」
「大丈夫だ。いざとなればわたしはこうして火を起こせる」

 かざした山田の手のひらから、ボオーッと炎が噴き出した。おお、まるで火炎放射器みたい。
 でもそれも一時(いっとき)のこと。吹雪に飲まれて炎はすぐに鎮火した。

「ですがそれではシュン様にご負担が……」

 何もない場所に火を灯し続けるのは、魔力も食うし相当集中力が必要だ。それも吹雪に向かって一晩中となると、いくら山田でも無茶ぶりって感じだろう。

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