断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 魔石を握りしめて、抱えた膝に顔をうずめた。考えがどんどん悪い方にいっちゃってる。自分で思ってる以上に、わたし心細いんだ。
 本当なら今ごろ食事中だったんだろうな。ロッジで食べる山ご飯、ちょっとたのしみにしてたのに。
 寒さと空腹で涙出そう。餓死と凍死、どっちが早いかな。ギロチン台に昇るよりかは、まだマシな死に方かな。

 眠ったらアウトだって分かってはいるんだけど。
 心地よいまどろみがやってきて、重いまぶたをゆっくり閉じた。

「……ナコ……ハナコ……」

 だぁれ、わたしを呼ぶのは?
 今すっごく眠いの。だからまだ起こさないでいて。

 あったかい手にぺちぺちと頬を叩かれて、くっつきそうなまぶたを何とか開いた。
 ここは間違いなく天国じゃないみたい。
 だって、目の前に瓶底眼鏡の山田がいるんだもの。

「ハナコ、しっかりするんだ」
「……シュン様」
「ああよかった、ハナコ……!」

 強く抱きしめられて、ちょっとだけ意識がはっきりしてきた。

「一度ロッジに戻ってみたんだが。わたしを探してハナコがこの吹雪の中を飛び出したと聞いて……本当に生きた心地がしなかった」
「申し訳ございません……わたくしおとなしくロッジで待っていればよかったですわね……」

 そもそもわたしが山田を手紙で呼び出したんだっけか。
 謝るのはそっちだったかなって思ったけど、なんだかまだ頭が働かないや。

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