断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
 芝生の先がひざ小僧をくすぐって、折れかけた心が玉を飛ばす手を止めてしまった。

 ふいに山田がつんのめった。足元にはたくさんのボール。眼鏡がなくて誤って踏んだんじゃ……?

 気づいたときにはもう、もつれ気味の足首めがけて最後の魔法を繰り出していた。
 真っすぐ飛んだティッシュ玉は、山田の足をきれいにすくい上げて。

 ここから先は、何もかもがスローモーションに見えた。

 前のめりに倒れる山田。さらに降ろされるわたしの体。
 手をついた山田のひざが勢いよく地面に沈む。
 時を同じくしてわたしのひざも、芝生の上にふんわりと着地した。

 しん……と静まり返った庭園で。

 山田とわたしの視線が同時にリュシアン様へと向けられた。
 そのリュシアン様は手にしたオーブを覗き込んでいる。

「肉眼ではまったくの互角。いま記憶オーブで確認しておるゆえ、双方しばし待たれよ」

 かたずを飲んで見守る中、映像を見終えたリュシアン様がひとつ大きく頷いて。
 そしてゆっくり片手を上げた。


「勝者、ハナコ嬢――!」
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