噛んで、DESIRE
「吾妻くんはいままでのクラスでどんな出し物をしてきたんですか?」
2コ歳上の彼は、わたしより多くの文化祭を経験しているはず。
そう思って聞けば、彼は少し考えたあと平然と口を開いた。
「覚えてない」
「……そ、そんなことあるんですか」
「だって、文化祭とか出たことないし。ぜんぜん興味すら湧かなかったからさ」
「せっかくの行事なのに……」
吾妻くんらしいといえば、彼らしい。
だけど1年に1回しかない楽しいイベントを覚えていないだなんて、さすがすぎる。
そこでふとある考えが頭に浮かんだ。
毎年出ていないとなると、まさか……。
「今年も、吾妻くんは文化祭参加しないつもりですか」
不安に思ってそう尋ねる。
彼なら平気でうなずきそうだから心配だったけれど、意外にもあっさり首を横に振った。