【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
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「これはこれは、王太子殿下ではありませんか。今日はご訪問のご連絡は受けておりませんが、いかがいたしましたか?」
私達が邸に帰邸すると、王太子殿下の突然の訪問に邸内は慌てふためき、すぐにお父様がやってきた。
さすがのお父様も驚いているわね。
「ああ、突然の訪問になってしまってすまない。少しあなたとオリビアに話をしておかなくてはならない事があってな」
「分かりました、ではこちらへ」
ヴィルは私の方を向いて頷き、私も頷き返す。
彼がこのような訪問をするのは重要なお話があるからに違いない。
ソフィアには難しい話になりそうだけど、私の手をギュッと握って離しそうもないわね……少し緊張感が漂う雰囲気を感じているのかしら。
可愛らしい小さな手を握り返し、不安を吹き飛ばすように笑顔でソフィアの方を見ると、ホッとしたような表情を見せる。
その笑顔が可愛すぎるので、一緒に応接間へ連れて行く事にしたのだった。
そうしてちょこんと私の膝にソフィアを乗せ、ヴィルは私の隣りに腰を掛け、お父様は向かいに座りながらマリーが淹れてくれたお茶を優雅に飲む……貴族ってこういう時ほどすぐに本題に入らないのよね。
話が気になりしびれを切らした私は、自分から話を振る事にした。
「殿下、私とお父様に話しておかなくてはならない事とは何かお伺いしても?」
「ああ、いつも通りの話し方でいいよ。君は私の婚約者なのだし、閣下は私のお義父上になるお方だし」
ヴィルはそう言ってニコニコしながら、こちらに満面の笑みを向けている。
彼の後ろに犬の尻尾が見えるかのようだわ。
そして少しづつこちらに近づいてきているような気がしなくもない。いえ、きっと気のせいではないわね。
”婚約者”と”お義父上”という言葉にとっても満足したらしく、自分の言葉にニコニコしているなんて……前だったら呆れて寒気が起きていたでしょうけど、今は不思議と可愛く思える。
頭をなでてしまいそうになるわ。
これが恋愛フィルターというものかしら。
転生前ではもう何年も感じていなかった感情だから、久しぶり過ぎていまいちピンときていない部分もあるけれど、意外にも嫌じゃないし、穏やかな自分がいる。
もうとっくにこの気持ちを受け入れていく覚悟は決まっていたのかもしれないわね。