【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
「初めまして、ご紹介にあずかりました通訳を務めさせていただきます、ラスクルといいます。ラスとお呼びください」
ラスクルと自己紹介をしたその美少年は、虫も殺せないような見た目をしていて、髪もふんわりとした色素の薄い髪に白い肌……どこを取って見ても人畜無害な可愛い少年と言った感じだ。
ソフィアと話が合いそうだな……この国に来て、彼女に良い話し相手が出来るかもしれないと微笑ましく思い、さっそく挨拶をする。
「よろしく頼む」
「はい!」
ラスは元気に返事をし、天使と見間違えそうなほどにこやかに笑った。
目の前の少年の周りだけ空気が違うようだな……私がそんな事を考えながらラスと握手をした瞬間、背筋がぞわぞわと粟立っていくのを感じる。
何だ?
見た目は少年だが、明らかに少年ではない――――オリビアはもちろん気付いてはいないが、分かる者には分かるように殺気を放っている。
ゼフとイザベル嬢の方にチラリと目線を移すと二人とも気付いているようで、イザベル嬢は短剣に、ゼフも戦闘体勢に入ろうとしているかのようだった。
握手をしている手から汗が滲み、じわじわと侵食されていくかのような感覚が襲ってきた。
頭の中が冷え切っていく……そして少年の笑みはほんの一瞬、天使から悪魔のように変わり、私に半歩近づくと小声で「よろしくお願いしますね、王太子殿下」と囁いた。
驚き固まる私に再度天使の微笑みをすると、颯爽とオリビアの方へと移動していったのだった。
もう殺気は放ってはいないようだが――――いや、しかしこの少年が何であれ、国の要人が集まるここで騒ぎを起こすような事はするまい。