【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
私の婚約者は今日もカッコいい ~王太子Side~
ドルレアン国に着いて一番初めにしたのは、国王夫妻への謁見だった。
この国の国王は私の母上の兄……伯父にあたる人物だが、全く世話になった記憶もないし、母上の事も疎んじているのか会う度に虫けらを見るかのような目を向けてくるので、伯父と思った事などほぼない。
案の定挨拶をしても快い言葉などかけてくる事はなく、むしろ態度は悪化していた。
何よりオリビアにすり寄っている姿に、私の中では嫌悪感が頂点に達し、その場で切り刻んでやろうかと思ってしまう。
しかしオリビアが何語か分からない言語でまくし立て、伯父上があっけなく下がっていった姿が見られたので、溜飲が下がったのだった。
さすがオリビアだ……彼女がカッコよくて眩しい。
それに私の為に言い返してくれたのだと思うと、胸が喜びで満ちてくる。
しかし彼女が使った言語は何語なのだろう?
全く聞いた事のない言語だったので、今度一緒に学んでおく必要があるな。
王太子が婚約者が使う言語を知らないというのは、情けない話だ。
そんな事を考えながら、その日は温泉にも浸かり、翌日はドルレアン国の王都を観光する事になった。
その観光中での事。
腕相撲大会に参加する事になった私とゼフ、レジェクは、大会の待合場に行くと、参加する巨漢たちが我々を見て笑い飛ばしてくる。
「兄ちゃん、そんな細腕で俺らと勝負するつもりなのか?」
「はっはっはっ、やめとけ、やめとけ!怪我して終わりだぞ!」
確かに見た目だけなら誰も我々が勝つなどと思わないだろうが、特にゼフは絶対に負ける事はないと思っているので、勝負は最後まで分からない。
「そうやって笑っていられるのも今の内だな」
私の言葉にゼフが頷く。
すると笑っていた大男たちは鋭い眼光で我々を睨み、殺気を放ってきた。
ここで受けて立ってもいいのだが、それではただ騒ぎを起こしただけの人間になってしまう。
そしてオリビアに呆れられて終わるだろうから堪えなければ。
呆れ顔のオリビアもまたいいのだが、絶対に優勝して惚れ直させたい。
トーナメント方式で行われ、ゼフは予想通りあっという間に勝ち、いよいよ自分の番になったのでステージに上がった。
先ほど大笑いしてきた大男が対戦相手だ。