【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
アレクシオス陛下からの、親書…?
「こちらは我が国の国王陛下からの親書にございます」
国王陛下は恐る恐る手にし、ゆっくりと開いた。
役目を終えたニコライ様は立ち上がり、イザベルの横に立って控えている。
私には何が書かれているのかまるで見当もつかないけれど、陛下の様子をジッと観察していると、読み進めている内にどんどん顔色が悪くなり、最終的に親書をハラリと落としてしまわれたのだった。
(ねぇ、何が書かれているの?)
(さぁ……でもこの国にとって気持ちのいい事ではないのは確かだ)
小声で聞いてみたものの、ヴィルはこの状況を楽しんでいるようにも見えて、私は国王陛下の様子をさらに観察する事にした。
落とした親書を次は王妃殿下が読み、横からレジェク殿下も盗み見ながら、王族の方々が顔を青くしていくので気になって仕方ない。
「父上は何と仰っておりますか?」
「………………」
国王陛下が黙ったままなので、代わりにレジェク殿下が答え始める。
「此度の石炭の件、誠に遺憾である。レジストリックにも調査団を派遣したとの事。我が国にも調査団を派遣し、もし事実ならドルレアン国への支援、並びに和平条約も白紙。ハミルトン王国の領海を我が国の船が通過する事も禁ずる、と……」
「そうですか……父上がそのように仰るのなら、もし我が国の領海を通る貴国の船があれば容赦なく砲撃されてしまうでしょう。同盟国にもこの話は知られる事となるでしょうし、船での輸送はなかなか厳しくなるでしょうね」
ひえ……そんな内容が書かれているとは…………アレクシオス陛下って、見た目はとても優しそうなのにやる事はとても優しくないのよね。
ヴィルをここに派遣したのも何かしらの事実(弱味)を突き止めてくれるだろう、と考えての事だと思ってしまう。
「陸路での輸送にはナヴァーロ王国を通る必要がありますし……まさかナヴァーロ王国まで関係しているわけではありませんわよね?」
私がナヴァーロ王国の名を出すと、国王陛下はさらに顔を青くし、息も絶え絶えの様子になる。