【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】


 「それはない!ナヴァーロは……あの女王は…………」

 
 ナヴァーロ王国の女王は、とても野性味溢れる女性だというのは聞いた事があるけれど、オリビアの記憶にお会いした記憶はない。


 「では女王に確認をしてみた方が良さそうですね」


 後ろからニコライ様がそう言うと、陛下は「ひぃぃぃぃいいやめてくれ!!!あの女王に知られたら!!」と死刑宣告を受けた囚人のように取り乱してしまったのだった。

 この様子ではナヴァーロは関係なさそうね。

 ナヴァーロとしてもこそこそとレジストリックと取引をしていたというのは、面白くない情報になる。

 大国二つに睨まれるような事になれば、この国にとっては死活問題だ。


 「叔父上、親戚のよしみでまたお願いしますが、炭鉱で見つけた我が国の民を連れて帰らせていただきますね」

 「あ、ああ……分かった…………連れて行くがよい」


 良かった……!これで堂々と連れて帰る事が出来るわ!

 私がヴィルの方を向くと、横顔だけれどホッとした表情を浮かべていた。

 ヴィルとしても緊張していたのよね……国王たちにYesと言わせる為にあの手この手を考えていたに違いない。

 私はお疲れ様の意味を込めて、彼の手をぎゅっと握った。

 ヴィルも握り返してきたので、気持ちが伝わったと感じて胸が温かくなる。

 そんな我々の雰囲気を一変させるような言葉をムンターニャ宰相が言い始めたのだった。
 

 「ヒヒッ、それはそれとして、ヴィルヘルム王太子殿下。そちらにお座りになっているお方、もしや古の伝承に記されている聖女様ではありませぬか?」

 「…………何の話だ?」

 「いえ、先日そちらの女性が我が城を見学している際、岩壁に話しかけたり、体が突然光り始めたりしておりまして……特殊なお力をお持ちな様子でした」

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