助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「いえ、私は嬉しいですよ。ラルドリス様が臣下の方と楽しそうに話しているのを見れて」
「……本当に、すまん」
「やだな、別に嫌味とかじゃなくて、本心です」

 なんだかどうも無理をしたような笑い方になってしまうメルを、ラルドリスは抱き締め、背中を撫でてくれた。

「大丈夫か?」
「ええ……」

 こうして彼がメルを心配するのは、ティーラの件があったからだ。
 あの後、彼女はザハールとの企てを洗いざらい話し……これは自分個人の裁量でやったことで、実家に関しては関係ないと主張した。
 王族に対しての愚挙を重く見られたことにより、事件は優先的に処理され終身刑という判決が下った。本来死罪判決がふさわしいところを、ジェナやラルドリスが内々に収めるよう働きかけたのだ。

 だがマーティル侯爵家についてはそのままではすまされるわけにもいかず、所領の一部を国へ返還させるという処分が下ったその数日後。
 ティーラは獄中で冷たくなった状態で発見された。
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