腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
倉木さんはこれでもかという程目を見開くと慎君の腕を振りほどこうとジタバタと暴れ始めた。



「やめて!!向坂君をたぶらかさないで!」


「は?佳都から私を求めてきたんだけど?そもそもアンタみたいな芋女佳都が相手にする訳ないじゃん」


「ちょっ!お、落ち着け倉木!!向坂はまだ来ねえのか!?」



明らかに今の倉木さんはまともじゃない。

確かに腸が煮えくり返る程ムカつく女ではあるけど、暴力に訴えるのはいかがなものか。

(というか、そういうの倉木さんが一番嫌ってそうなのに)

よっぽど反りが合わないのかなぁ。



HRが近付き、少しずつクラスの人達も登校してくる。

そろそろ喧嘩をやめて貰わないと大事になっちゃうよ……



「倉木があんなキレるタイプとは思わなかったよなー。つか、向坂と倉木って付き合ってた訳じゃなかったんか?」


「え、つ、付き合ってないよ!た、多分…」


「へー、じゃあ和泉って女と付き合ってたんだ」


「それも違うよ!!」


「なら勘違い女二人で勝手に喧嘩してるってだけか?」



頬杖をつきながら適当な視線を向ける佐原君。

相変わらず佐原君の言い方はキツイけど、向坂君の言葉を信じるならそういう事になる。

どことなく気まずさを感じて控えめに頷くと、佐原君は「あほくさ!」と舌をべーっと出した。


ギャラリーが増えてきた事でようやく落ち着いてきたのか、倉木さんと和泉さんはお互いを睨みつけて、和泉さんは自分の教室へと帰って行った。

慎君しか止めてなかったから、途中から来たクラスメイトは慎君が浮気して大揉めしてると勘違いしてた。可哀想に。

疲れ果てた様子で自分の席に戻る慎君にエールを送りつつ、結局HRが始まっても来なかった向坂君に首を傾げた。

< 139 / 168 >

この作品をシェア

pagetop