腹黒王子とめぐるの耽溺日誌
「あれ、そう言えば谷口に会うのに倉木さんは連れて来なくて良かったの?」


「俺も連れてこようとしたんだけど、今日は予定があるみたいでさ。倉木自身もなるべく谷口とは接触したくないみたいだし」


「まぁ、そうだよね……」


予定は私もあったんだけど……と小言を言いたくなったが、グッと堪え、大人しく向坂君の後ろに着いていく。

東校舎の3階に向かっている所を見るに、あの時と同じ空き教室に行くつもりなのだろう。

予想通り、空き教室の前まで来ると向坂君はガラリとドアを開けて教室の中にいる人物に笑顔で言い放った。



「お待たせしました、谷口先生」


「……あぁ……構わないよ……」


(相変わらずやつれてるなぁ…)



あの時から大分やつれていたように感じていたけど、今の谷口は更に血色が悪く見える。

無理もないだろう、今から生徒会の裏事情を他の生徒に暴露しようとしているんだから。
バレたら谷口がどうなるかわかったもんじゃない。



「早速ですが、教えて貰っても良いですか?生徒会の秘密を……」


「…………分かった。でも、立花のことはあまり探れなかったんだ。取り巻き達が邪魔なのと、立花自身警戒が強いから……本当だ、信じてほしい」


「分かってますよ。だから、分かったことだけで良いです。俺達にその情報を教えてください」



立花の情報は無いという言葉に少し眉をひそめたものの、向坂君はすぐに笑顔を作り直し谷口に催促した。

谷口は深呼吸をして、紙を数枚取り出して見せた。


< 92 / 168 >

この作品をシェア

pagetop