凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
最初はどこかに綻びがあるのではと、ルーリアは恐る恐る屋敷の中を進んでいたのだが、その心配は杞憂に終わった。
そして今は、ディベルやクロエラよりもカルロスの光の魔力の方が優れているのではと思えてならない。少なくともディベルの魔力が込められた魔法石と、屋敷に点在している魔法石では優劣ははっきりしている。
廊下を進んでいくと扉が外された出入り口に差し掛かり、視線がそちらに向くと同時に、自然とルーリアの足が止まる。
「中に本がたくさんありますね」
「こちらはカルロス坊ちゃんの書斎です。子供の頃はずっとこの部屋に入り浸っておりましたね。奥には調合台もありまして、様々な魔法薬を楽しそうに作って遊んでおりました。最初に作ったのは回復薬だったかしら」
子供の頃と聞き、出会った時の幼い彼を思い出し、ルーリアは表情をわずかに柔らかくさせた。そして、回復薬なら光の魔法を使うはずだと考えて、もしかしたらと確認する。
「カルロス様は光魔法が一番得意なのですか? 魔法石に込められている光の魔力がどれも力強く感じられるので」
「どうでしょう。カルロス坊ちゃんはどの魔法も難なく扱えますからね。おまけに剣術の腕も子供の頃から大人顔負けでしたし。才能の塊のようなお方です」
「そんな優秀な方に、私なんかが……申し訳ないです」
そんなことないと励ますようにルーリアの肩にエリンが手を置く。続けて「奥様」と小さく呼びかけられたため、ルーリアは勇気を出すようにエリンを真っ直ぐ見つめて、自分の思いを伝える。