凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「あの。どうかルーリアとお呼びください。朝食の時にも少し話に上がりましたが、私は訳ありなのです。この婚姻もそれが理由で、本来ならカルロス様の妻になれるような人間ではありません」
ルーリアのことを詳しく知らないため、エリンは何も言えずに黙り込む。
「いつかカルロス様には心から愛し、妻にと望む素敵な女性が現れると思います。どうかその時は、私などいなかったものとし、その方を初めての奥様として接してあげてください」
わずかに微笑みを浮かべたルーリアに、エリンは切なさを堪えるように、唇を軽く噛んだ。
「これからはエリンさんと同じ、侍女として私を扱ってください。食事の準備や屋敷の掃除、できることはなんでもします。エリンさんとレイモンドさんにはこれ以上迷惑をかけないよう頑張ります」
「迷惑なんてこれっぽっちも感じてないし、どれだけ掛けられたって構わないわ」
堪えきれなくなったようにエリンがルーリアをギュッと抱きしめて、優しくそう話しかけた時、ゴンゴンゴンとドアノッカーが激しく鳴らされて、ルーリアとエリンは揃って玄関の方へと顔を向ける。
「どなたかいらっしゃいましたね。行って参りますね」
ぱたぱたと足音を立てて玄関に向かっていくエリンの後ろ姿をルーリアはじっと見つめる。そして、抱きしめられたことに戸惑いを覚えつつも自分の腕に残っている余韻に触れると、はにかむような笑みを浮かべた。