凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
ルーリアと寄り添って練り歩き、多くの好奇の目に晒されるよりは、すぐそこの木陰のベンチでしばらく身を潜めていたほうが良いと判断し、カルロスはため息混じりに告げ、先に歩き出した。
ルーリアも異論なく、カルロスの後に続いて、木々が立ち並ぶ木漏れ日の中へと歩を進めていく。
カルロスから眼差しで促されるままに、ルーリアはベンチに腰掛ける。体の計測はもちろんのこと、いくつも試着をしたため、思っていたよりも疲れていたらしく、ルーリアは小さく息を吐いた。
「疲れさせたな。すまない。今日はこのくらいにして、少し休んだら屋敷に帰ろう」
ルーリアを見つめながらカルロスが発した言葉に反応して、エリンが「カルロス坊ちゃん」と話しかけた。ぽそぽそとやり取りを交わした後、エリンはルーリアの左隣に持っていた荷物を置き、「すみません。少し離れますね」とにこやかに笑って踵を返した。
遠ざかっていくエリンの後ろ姿をぼんやり見つめていると、ルーリアの右側にカルロスも腰掛け、くつろぐように背もたれに背中を預け、足を組む。
「こうやって、のんびりベンチに腰掛けるのは久しぶりだな。たまには良い……注文した魔法石が届き次第、庭の守りを固め、ルーリアが自由に出入りできるようにする。それまで屋敷に閉じ込めてしまうことになるが、もう少し我慢してくれ」
割ってしまう度、叱られ続けてきたルーリアには、魔法石は高価なものであるということは身に染みてわかっている。屋敷で使用された分だけでもすでに結構な金額がかかっているだろうに、庭用としてさらに買い足してくれたのだと思うと、お礼すらできない自分が情けなくなってくる。
とは言え、そのまま何もしない訳にはいかない。必ずお返ししないとと考えたところで、ルーリアはハッと思いつく。
「私、魔法薬なら作れます。あまり出来が良くないのですが、数だけは多く生成できます。それを売って、使わせてしまった金額を少しずつでもお返ししていきたいです」
「金銭に関して気にする必要はない。けど、魔法薬は気になるな。なんでも良いから一度作ってみせてくれ。屋敷の調合台を使ってくれて構わないから」