凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

(彼は身なりからして貴族の子で間違いないし、年齢もたぶん私より少し上くらい。もしまた彼に会えたら……言葉を交わすことが許されるなら、あの時助けてくれたお礼を言いたい)

 心が熱くなる反面、それは不可能だろうこともルーリアは分かっていた。
 城に着いた後も、もちろん行動は制限され、王妃への挨拶が済めば、すぐに会場を後にすることになる。短時間で朧げな記憶を元に大人になった彼を見つけ出すことは難しいだろうし、仮に見つけられたとしても、ディべルとアズターの目がある限り話しかけることなど出来ないだろう。
 ふと街の裏路地に続く暗がりの中に、黒い影を纏い、魂の抜けたような表情を浮かべている小さな精霊の姿が空中に浮いているのを見て取り、ルーリアはぎくりとして慌てて視線を逸らした。

(黒精霊。大丈夫、こっちを見ていなかったもの。私に気づいてないわ)

 普段は伯父の光の魔力で施された結界の中にいるため、黒精霊の目に映らないように過ごせているが、今は結界の外にいる。髪飾りのサファイアが魔法石となっていて、そこに魔力が込められ結界の役割を果たしているが、それだけでは決して万全だとは言えない。


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