凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
相手が騎士団など、大口の場合は生成者と直接契約する場合もあるが、魔法薬を手に入れるには医局に行くのが一般的だ。
「少し多めに備蓄するようにしているのに、在庫が少なくなっていると言われていたのをうっかり忘れていて、しかも今朝、レイモンドが残りを持って行ってしまったのよ」
ルーリアは医局の場所を知らないが、それほど離れていない所にあったとしても、先ほどの老婆の足では大変だろうことは想像できる。
少しだけ躊躇ったのち、ルーリアは思い切って声をあげた。
「……あのっ! 聖水があれば、すぐに回復薬を作れます。もちろん私が作ったもので良ければですけど」
ルーリアの申し出にエリンはハッとした顔をし、すぐに笑顔となる。
「それなら奥様にお願いしましょう! 私、お婆さんを呼び戻してきます。聖水は書斎にありますので、そちらでお待ちください」
「はい」
すぐさまエリンは外へと駆けて行き、ルーリアは言われた通り書斎へ移動する。
カルロスが幼い頃に入り浸っていたという話を思い出し、わずかに胸を高鳴らせながら室内に足を踏み入れる。三つほど並んだ背の高い本棚の横を進んでいくと大きな机があり、その先に調合台が置かれてあった。
調合台の立派さや、その後ろにある大きな棚の中にびっしりと詰まった薬品の瓶に圧倒されるが、机の上に写真立てがあるのに気づき、つい足を向ける。