凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「……カルロス様だわ。懐かしい」
飾られていた写真に写っていたのは、ルーリアの記憶に残っている幼い彼そのものだった。そんな彼を中心にして後ろに男性と女性、彼の隣に女の子がいる。
「カルロス様のご両親と、妹のカレン様かしら」
カルロスと同じ黒髪碧眼で精悍な顔立ちの男性から、栗色の髪と瞳を持ち微笑みを浮かべている女性と少女へと順番に視線を移動させていく。
そして、今も過去もルーリアの記憶にはない、にっこり笑っている幼いカルロスへと視線を戻して、つられるように口元を和らげた。
「お待たせいたしました。奥様、白衣を持ってきましたので、よかったらどうぞ。夫のものなので少し大きいと思いますが、汚れるよりマシですので」
書斎に急ぎ足で飛び込んできたエリンが、両手で抱え持っていた白衣をルーリアに差し出した。すぐにルーリアは机の前からエリンの元へと歩き出し、「ありがとうございます」と頭を下げてそれを受け取る。
羽織った白衣は、少しどころではなくルーリアには大きくて思わずふたりは顔を見合わせる。
「奥様は華奢ですから、余計に大きく見えますね。どうしましょう。代わりになるような物を探してきましょうか」
「平気です……あ、でも、袖を折らせてもらっても良いですか?」
「もちろん、構いませんよ」
早速ルーリアは邪魔にならないところまで袖を折り曲げようとするが、うまくできずモタモタ手間取っていると、エリンが手を伸ばし、代わって袖を折り始める。
ルーリアが「ありがとうございます」と嬉しそうに伝えると、エリンは「どういたしまして」と笑みを浮かべた。
それからルーリアはエリンと共に調合台後方の棚の前へと移動し、引き出しや扉を開けつつ、瓶や聖水や薬草の保管されている場所や、常備の魔法薬置き場などの説明をひと通り受けた。