凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
ルーリアは聖水の入った大きな瓶と容器となる小瓶を調合台へと移動させ、それらと向かい合った。
小瓶の半分ほどまで慎重に聖水を流し込むと、聖水を観察するように小瓶を自分の目の高さまで持ち上げる。軽く揺らせば、キラキラとした輝きが液体の中で散り、ルーリアは「わあ」と小さく声を上げる。
聖水にも良し悪しがある。これまで生成する時に専ら使用していたものは、それほど高くない聖水のため、これほど繊細な輝きは生まれない。
王族に上納する時のみ、使用するのは高級な聖水だったのだが、それでもこれほどまでに美しい輝きではなかったようにルーリアには思えた。
「とても純度が高いのですね。これほどのものは初めてで驚きました」
「さすが奥様、お分かりになられるのですね。お恥ずかしい話、私には普通のものとあまり見分けがつかないのですが、カルロス坊ちゃんもレイモンドも一級品だと言っていました」
「高価なものですし、カルロス様の許可をいただいてからの方がいいのでは?」
高級な聖水を使用した時は、クロエラから「一滴も無駄にするな」と繰り返し厳しく言われ、その上、生成時はすぐそばで見張られもした。
エリンの言う一級品がどの程度のものなのかルーリアはよく分かっていないが、少なくともその時よりは高価な物で間違いない。無断で使用したらカルロスを不愉快な気持ちにさせてしまうのではないかと、ルーリアはすでに小瓶へ移し替えてしまった聖水を不安そうに見つめた。
しかし、エリンは微笑みと共に首を横に振って否定する。
「昨晩カルロス坊ちゃんが、奥様が調合したいと言った時は、屋敷にある物すべて遠慮せず自由に使ってもらうようにとおっしゃっていました。足りないものがあれば言えとも」
昨日のカルロスとのやり取りを思い出し、早速、動きやすいように根回ししてくれたのだと考えれば、今またルーリアは彼の気遣いに胸を熱くさせる。