凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 自分との婚姻はカルロスにとって得することは何もないとわかっているからこそ、少しでも彼の役に立てるように頑張ろうと、ルーリアは両手の拳を軽く握りしめる。

「あまりお待たせしても申し訳ないので、生成を始めますね」

 そう宣言して、ルーリアは左手で小瓶を持ち直し、右の手の平を瓶の下部へと近づける。ゆっくりと目を瞑って数秒後、聖水とルーリアの体が共鳴し合うように断続的に輝き出した。ルーリアからふわりと放たれた光の粒子が線状に連なり、まるで意思を持っているかのように体の周りを旋回し始める。
 ルーリアが右手の指先を動かせば、次々と現れ出る輝きが線状の粒子に折り重なって、やがて複雑で、しかし繊細な模様を浮かび上がらせていく。
 神秘的な光景を目の当たりにし、エリンは目を大きく見開き、圧倒されるようにごくりと唾をのむ。
 線が帯状まで大きくなった後、一気に弾け飛ぶ。ルーリアやエリンの周りがキラキラとした輝き溢れかえったその数秒後、ものすごい勢いで光は小瓶の中へと吸い込まれていった。

 室内が通常を取り戻してからルーリアは目を開け、自分の手元で視線を留める。
 小瓶の半分の量しか聖水は入っていなかったが、それが今にも溢れそうなほどの量にまで増えていた。いつもの通りにできたことにルーリアは安堵の息を吐いた。

「回復薬、ひとつ完成しました。一級品を使わせてもらったから魔力の馴染みがとっても良いです……エリンさん?」

 感想を述べながら、ルーリアは出来立ての回復薬をエリンに手渡そうとする。しかし、エリンは唖然とした顔で回復薬を見つめたまま、受け取ることなく固まっていて、ルーリアは申し訳なさそうに俯く。

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