凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「良い物を使わせてもらった割には、この程度の出来ですみません」
「なっ、何をおっしゃいますか! 普段、医局で購入しているものとは輝きが比べ物になりません。それどころか、これほど美しい回復薬を私は見たことがありませんよ」
「そ、そうでしょうか?」
「ええそうです! このままカルロス様の元に持って行って、見ていただきたいくらいです。たくさん褒めていただけますよ……とは言っても、こちらはお婆さんにお譲りする約束をしてしまいましたし、お渡ししてきますね。奥様は休んでいてください」
エリンは小瓶を栓で封すると、慌ただしく書斎を出て行った。ひとり残されたルーリアは思わずぽつりと呟く。
「……カルロス様に褒めていただける?」
言葉にしてみれば、ルーリアの心の中にさまざまな思いが巡り出す。
(私程度の魔力ではきっと褒めてもらえないと思うけど……でもカルロス様はお優しいし、見てみたいともおっしゃってくださったし、もしかしたら本当に褒めてくれるかもしれない……カルロス様に褒めてもらいたい)
はっきりと抱いてしまった望みに戸惑いながらも、ルーリアは動き出す。
どうせなら備蓄をいっぱいにしてしまおうと考え、先ほど教えてもらった戸棚を開けて、まずは在庫を確認する。
中には、毒消しと表記された小瓶が五つほど並んでいて、その横のがらんとした空間に、新たに十個くらい並べられるだろうと目算する。
続けて、棚の中で見つけた水差しを手に取ると、そのまま炊事場に向かって歩き出した。
これ以上高価な聖水を使うのは気が引けるため、自分で水を聖水に変えてしまおうとルーリアは考えたのだ。
聖水の生成は、幼い頃にクロエラに言われて一度だけ行ったことがある。生成は成功したが、大量の魔力を一気に増幅させたことでルーリアの中にある闇の魔力が強く反応してしまい、結果、失敗に終わったのだ。
クロエラからもそれ以来求められなかったため、もう一度やってみようとは思わなかったのだが、先ほど生成を終えた後、これなら力を発揮しても問題ないと感じたのだ。