凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
屋敷中にあるカルロスの魔力が込められた魔法石と、何より首から下げているネックレスの魔法石のおかげで、ルーリアの中にある闇の魔力が完全に抑え込まれたからだ。
(まるで後ろからカルロス様に抱きしめられているような感覚だった)
その瞬間のことを思い返せば自然と頬が熱くなり、思わずルーリアは水差しを抱きかかえる手に力を込めた。
廊下を進む途中で、玄関先でエリンに繰り返し頭を下げている老婆の姿を目にし、ルーリアは思わず足を止め、わずかに肩の力を抜く。
(良かった。喜んでもらえたみたい。私でも役に立てた)
ふたりの様子からそう判断した時、屋敷の中に栗色の髪を可愛らしく結い上げた女性が入ってきて、その光景に不思議そうな表情を浮かべた。
続けて、その女性と目が合ったため、ルーリアは慌ててお辞儀をして、炊事場に向かって小走りで進み出した。
今日はたくさんの人が屋敷内にいるというのに、炊事場には誰の姿もなかった。ルーリアはきょろきょろしながら室内に足を踏み入れて、水差しに水を汲み入れる。
「今日はお手伝いに来てもらう日だったのね。失敗したわ」
誰かがぼやきながら入ってきたのを感じ、ルーリアがすぐさま顔を向けると、そこにはついさっき見かけた栗色の髪の女性が立っていた。
「この様子じゃ、お兄様は外出中ね」
「……お兄様ですか?」
キョトンとしたルーリアに、女性は信じられないといったような表情を一瞬浮かべてから、はっきりと告げた。
「ええそうよ。カルロスお兄様。私は妹のカレンです」
そこでルーリアは書斎で見た写真に写っていた少女を思い出す。言われてみれば確かに幼い頃の面影が残っていて、突然のカルロスの妹との対面に大きく戸惑う。