凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 真剣な声音でエリンから告げられた事実に、カレンは唖然とした顔をし、改めてルーリアを見た。

「ちょ、調合師でしょ?」
「いいえ。ルーリア奥様です」
「……初めまして、ルーリア・バスカイルです。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」

 ルーリアは手にしていた水差しを調合台の上に置くと、体を小さくさせながらカレンに向かって膝を折って丁寧に挨拶をした。カレンは今さっきの自分の発言を思い返したのか、手のひらで口を覆う。

「カルロス坊ちゃん、もうすぐお帰りになりますよ。お茶の準備をしますから、どうぞお待ちください」
「いっ、いえ。絶対に会いたくないわ。皆さんもお忙しそうだし出直します」

 エリンが少し冷たい口調で提案すると、カレンは一気に顔を青くする。そのまま炊事場を出て行こうとしたが、途中でルーリアへと振り返った。

「……あの、ルーリアさん……ごっ、ごめんなさい!」

 深く頭を下げた後、淑女らしからぬ様子でバタバタと足音を立てて、その場から逃げ出した。

「奥様、すみません。カレンお嬢様は根は悪くないのですが、言葉が過ぎることが多々ありまして」
「い、いいえ。だいたい本当のことですから」

 申し訳なさそうに謝ってきたエリンにルーリアは大きく首を横に振り、気にしていないことを伝えるように極力明るい声で返事をした。

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