凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「先ほど回復薬をお渡ししましたが、とっても喜んでおりました。奥様の負担にならなければ、ぜひまた譲って欲しいと」
「そんな風に言ってくださったのですか。嬉しいです。私、回復薬、もう少し作っておきますね」
幸せそうに水差しを抱きかかえると、ルーリアは書斎へ向かって歩き出す。エリンは「無理なさらないでくださいね」と声をかけ、ルーリアの華奢な後ろ姿を少し切なげに見つめた。
ルーリアが書斎にこもって数時間が経ち、窓の向こうの景色が夕暮れ色に染まり始めたとき、カルロスが勢いよく部屋の中へと入ってきた。
「ルーリア!」
「カルロス様、お帰りなさいませ」
ラグの上にぺたりと座って、お昼ご飯として持ってきてもらったパンをもぐもぐ食べていたルーリアは、慌てて立ち上がってカルロスにお辞儀をする。
「座ったままで構わない。食事を続けて」
カルロスにそう言われ、ルーリアは「はい」と頷いて、元の体勢へと戻るように腰を下ろした。しかし、皿に戻したパンには手を伸ばさず、自分の周りに置いていた本をひとつにまとめるように整頓し始める。
そんなルーリアと向かい合う様にして、カルロスも腰を下ろした。
「昼間、カレンが来たとエリンから聞いた。余計なことを色々言われていたとも。すまない」
「平気です」
平気と言いつつもルーリアが視線を伏せると、カルロスが顔を覗き込んでくる。
「平気だなんて嘘をつくな」