凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 レイモンドの手が輝き出し、指先を動かすと、まるで糸で縫っているかのように傷口で光が動き始めた。
 治療行為を初めて目にしたルーリアは、その様子を息をのんでじっと見つめた。
「……すごい」というレイモンドの呟きからわずかに遅れて、光り輝く中で出血はぴたりと止まり、傷口もゆっくりと閉じていった。
 ホッとしたのも束の間、塞いだ傷口から黒い影が滲み出てきて、カルロスとレイモンドは一気に表情を険しくさせた。

(このままでは、セレットさんが黒精霊になってしまう)

 精霊が黒精霊へ堕ちるところなど見たことはないが、本能でそう悟ったルーリアは、弾かれたようにカルロスの横に並び、加勢するようにセレットの体に手をかざした。

(少しでも力になりたい……私もカルロス様の大切な人たちを守りたいから)

 ルーリアが目を瞑れば、調合時にエリンが目にした時と同じように体が輝き出し、そして光を纏い始める。すると今度はその光がセレットの体にまとわりついている黒い影を絡め取り、すべてルーリアが吸収していく。
 闇の魔力をすべて取り込むとルーリアが纏っていた光が一気に放たれ、キラキラとした輝きが室内に広がり舞い落ちていく。
 カルロスとレイモンドが唖然とする中で、ルーリアは自分の中で暴れている闇の力から与えられる苦痛を必死に耐えるようにその場に蹲った。
 苦悶の声を上げるとルーリアの体が再び光り輝き、そうかと思えば、黒い影がその身を覆う。

「ルーリア、しっかりしろ!」

 カルロスは考えるよりも先に、ルーリアの細い体を包み込むように抱き締めた。

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