凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「失礼するぞ……あれ。いない」

 エリオットはノックしたものの返答を待たずに、カルロスの執務室のドアを勢いよく開けたが、そこに主人の姿はなかった。そのため、ちょうど隣の部屋から出てきた剣をふたつ携えた団員に声を掛ける。

「おいケイン、カルロス隊長がどこにいるか知ってるか?」
「カルロス隊長なら先ほど、医療室に行かれました」

 すぐに返ってきた言葉を聞いて、ルーリアは思わず息をのむ。

「カルロス様、もしかしてお怪我をされたとか」

 不安そうにルーリアが確認すると、ケインと呼ばれた団員は慌てて両手を振った。

「確かに怪我人は出たのですが、それはカルロス隊長ではありませんので……ところで、そちらの女性は?」

 そこでケインは、ルーリアとエリンを気にかける様子を見せ、問いかけた。それを受け、エリオットから「自己紹介を」と促されたため、ルーリアはおどおどしながらお辞儀をした。

「私は、ルーリア……ルーリア・ジークローヴと申します!」

 バスカイルと名乗りかけるが、自分はもう既にジークローヴであることをルーリアは思い出し、声を上擦らせながら今現在の名を名乗った。

「ジ、ジークローヴ!? ってことは隊長の奥様ですか。バスカイル家の方だと聞いております」
「はい。そうです……姉の方です」
「失礼しました! 初めまして! カルロス隊長にはいつもお世話になっております。ケント・ニードリーと申します」

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