凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
玄関口まできたところで、カルロスはエリオットへ問いかける。
「団長はこのまま執務室に戻りますか?」
「いや、医療室に行く。早速魔法薬の確認をさせてもらう予定だ」
「それならレイモンドに帰るから戻るように伝えてください」
「わかった。それじゃあルーリアさん、今日はありがとう。また近いうちに」
にこやかに手を振るエリオットからルーリアを引き離すように、カルロスはすぐさま手を引いて外へと出た。門扉の近くに停めてある荷馬車へ足を向けるが、途中でカルロスは迷うように足を止め、ルーリアの手を離した。
「俺は馬を連れてくるから、荷馬車で待っていてくれ」
「わかりました」
言葉を交わすとすぐにカルロスは厩舎へ歩き出した。もちろんルーリアはエリンと並んで荷馬車へと移動し始めるが、門の外から騒ぐような声が聞こえてきたため、途中で足を止めて不思議そうに門を見つめる。
「なんでしょうね?」
エリンも気づいたらしく、ルーリアの少し先で立ち止まって同じように目を向けた。
その瞬間、門がバタンと開かれ、男性が騎士団員ふたりに両腕を捕えられた状態で敷地内に入ってきた。
そして男性は普通ではなかった。瞳は真っ黒に染まり、唸り声を上げてはがむしゃらに身を捩って騎士団員たちを振り払おうとする。そしてルーリアには真っ黒な影が男性に纏わりついているように見えた。
その黒い影には覚えがあり、まるで反応するかのように鼓動が重々しく鳴り響いた。