凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 再び放たれた闇の魔力も剣で沈め、続けて放たれた水礫も全て凍らせて、そのまま男へと吹き飛ばす。距離を置いていた騎士団員たちだけでなく、新たに詰め所から出てきた者たちが自分ににじり寄ってきているのに気づいてか、男はこの場から逃走を図ろうとする。しかし、すかさず、カルロスが魔法で両足を凍らせ、男の動きを封じた。

「連れて行け。そこのふたりの治療を速やかに頼む。団長にも報告を」

 カルロスが命じると団員や医療者から「はい!」と返事が上がり、それぞれに動き出した。

「ルーリア、大丈夫か?」

 確認するような眼差しを向けられながらカルロスに問われ、ルーリアは顔を強張らせたまま「はい」と返事をする。そして、喚き散らす男を数人がかりで運んでいく様子を目で追いかけた。

「あの方は……」
「闇の魔力にのまれてしまった者。穢れ者とも呼ばれている」
「それなら、私もああなる可能性があるということですね」

 それにカルロスは答えず、ルーリアからそっと視線を逸らす。

「あの様に、我を忘れたまま生きていく者が大半だが、中には自我を取り戻す者もいる。そいつらは闇の魔力を巧みに使って人々に災いをもたらす様になる。心は蝕まれきっているから、救い出すことはできない」

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