凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
(今は優先すべき者がいる)
カルロスは不安そうに荷台で小さくなっているルーリアへと視線を落とし、屋敷への道から逸れることなく馬を走らせた。
屋敷の中に入り、ようやく肩の力を抜いたルーリアを見て、カルロスもつられるように安堵する。
「やっぱり、屋敷の中は落ち着きます」
穏やかな声でルーリアはそう呟いた後、炊事場に向かって休む間もなく歩き出したエリンに気付いて「お手伝いさせてください」と話しかける。しかし、エリンから「大丈夫ですよ。奥様は休んでいてください」と微笑み返され、ルーリアは足止めをくらう。
それでも行くべきか行かないべきかと悩んでいる様子の彼女にカルロスは苦笑いする。
「団長に振り回されて疲れただろう。のんびりしていたらいい」
「……あの、でしたら私……もしかしたらまたすぐ魔法薬が必要になるかもしれませんし、持っていった分だけでも、生成しておこうかなと思います」
気持ちはすでに書斎に向かっているような様子で、少しばかりそわそわしながらルーリアはカルロスにお願いする。
「あのカルロス様、必要な時はまた魔法薬をお譲りしてしまっても構いませんか? カルロス様は立場がありますし、私が出しゃばったりしたら何か不都合があるのでしたら、もちろん辞めておきますけど」
「構わないよ。でも時々俺も依頼状況を把握させてもらう。無理は絶対に禁止だ」
「はい。ありがとうございます!」
わずかに口元を綻ばせたルーリアにカルロスは思わず目を奪われ、そのまま書斎へと足早に歩き出したルーリアの後ろ姿をじっと見つめる。
そんなカルロスの横にやって来たレイモンドも、眩しそうにルーリアを見つめる。