凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「最近、穢れ者が多出しているからか、魔法薬、特に回復薬の消費が早いですからね。協力してくれるのは正直助かります」
そこでレイモンドは逡巡するように話を途切らせるが、すぐに自分の考えを言葉にした。
「最近のバスカイル家の魔法薬は価格と効果が見合っていません。はっきり言ってひどいです……だからか、今まで騎士団がバスカイル家から買っていた魔法薬は、ほとんどルーリアさんが生成されていた物のように思えてなりません」
「本人はそうとは思っていないようだが、俺はルーリアひとりで作らされていたと確信している。このままバスカイル家の評判は落ちていくだろう。もし、ルーリアに接触しようとするなら、全力で阻止してやる。彼女は二度と渡さない」
カルロスの脳裏に、初めてルーリアと出会った時のことが蘇り、引き止めれば良かったという後悔がまた胸を苦しくさせた。
「二度と、ですか。カルロス坊ちゃんはルーリアさんと、前に会ったことがあるのですか?」
「ああ、十年前に一度。その頃、レイモンドにも、はちみつ色の髪色の女の子を知らないかと何度か聞いたと思う」
告げられた事実にレイモンドは目を丸くして、ポンと手を打った。
「あの時の! 確かに何度も聞かれましたね。その子が子がルーリアさんだったのですか……なるほど納得しました」
「何をだ?」
「結構な数の縁談話が来ていたのに見向きもしなかったカルロス坊ちゃんが、どうしてルーリアさんとは結婚する気になったのか不思議だったのですよ。それはルーリアさんだったからですね。長年の片想いが実って本当に良かった」
カルロスは動きを止め、「片想い」という言葉を頭の中で繰り返す。そして数秒後、大きく首を横に振る。