凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「俺の目の前で、堂々妻を口説かないでいただきたい。気分が悪い」
カルロスが容赦なく力を込めれば、ルイスは苦痛で顔を歪ませて、ルーリアからやっと手を離した。
「すまない。君へのただの嫉妬だ。許してくれ」
おどけた様子でルイスはカルロスから距離を置こうとするが、今度はカルロスがルイスの手を離さない。
「それだけじゃないだろう。今更隠しても無駄だ。俺の目には闇の魔力が見えている」
カルロスからはっきりと断言され、ルイスは舌打ちした。そしてぶつぶつと何かを唱えた数秒後、招待客たちから次々と悲鳴が上がり始めた。
何体もの黒精霊が人々の頭上に姿を現し、その中に鎖に繋がれた女の黒精霊がいることにカルロスが気づいた瞬間、鎖の黒精霊以外のすべてが地面へと落下し、人々を襲い始めた。
「カルロス・ジークローヴ。俺に構っていて良いのか? あっという間に、ここにいる人間たちが穢れ者になるぞ」
王妃の主催のため、騎士団員が何名か警備にあたっている。しかし、彼らだけでは力が及ばず、貴族たちだけでなく、いずれ王妃にも牙が向けられることだろう。
しかし、目の前にいる男はこれまでずっと探し続けていた輩だ。みすみす逃したくないという気持ちと葛藤していたが、「助けて!」という声を聞いてしまい、カルロスはルイスから手を離した。
あざ笑うような顔をして逃げ出したルイスを睨みつけた後、「隊長!」と近づいてきた部下のケントへと視線を移動させる。