凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「でしたら、今こそ、約束を果たしてください。遅かれ早かれ、私はもうすぐ穢れ者になるでしょう。だからお願いします」

 約束と言われ、カルロスは動きを止める。

『ルーリアが自我を失い闇の魔力を使い、この屋敷の者たちを傷つけるようなことがあれば、俺はお前を闇の者とみなし、責任を持ってその命を終わらせてやる』

 かつて自分が投げつけた言葉に胸が一気に苦しくなる。その判断をすべきなのかもしれない。しかし、「わかった」という言葉をカルロスはどうしても言い出せなかった。
 迷うカルロスの背中を押すように、ルーリアはカルロスの手を優しく掴み取ると、剣の柄へとそっと押し付けた。

「あなたは私を助けたのです。そこにカルロス様が背負う罪などありません。カルロス様の妻となれて、私はとっても幸せでした。あなたのこれからの未来が温かさで満ちていることを願っています」

 にこりと笑いかけてきたルーリアにカルロスは息をのむ。そしてゆっくり立ち上がると剣を引き抜いた。
 思わずエリンが「カルロス様!」と声を上げると同時にルーリアも立ち上がり、カルロスと向かい合う。カルロスは冷静な面持ちのまま、ルーリアは覚悟を決めたような顔で互いを見つめ、そして鋭い剣先がルーリアへと向けられた。
 ルーリアは最後にもう一度微笑みかけ、すべてを受け入れるようにそっと目を瞑った。

 次の瞬間、カルロスが手の力を抜き、床に剣を落とした音が大きく響いた。驚いてルーリアが目を開けた時にはもう、カルロスはルーリアを抱き締めていた。

「たとえ間違った選択だったとしても、俺はルーリアを殺したくない。あなたとの未来を心から望んでいる」

 腕の中で息をのんだルーリアを包み込むように、カルロスは抱き締める力をわずかに強くさせた。

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