凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「ルーリアを誰よりも大切に想っている。愛している」
「カルロス様」

 涙をこぼしながら弱々しい力で抱きついてきたルーリアの頭部にカルロスは口付けを落とす。それからゆっくりと体を離し、落とした剣を掴み取った。
 そのままルーリアを背で庇うようにしてカルロスは剣を構えた。

「ふたりは隙をついてどうにか逃げてくれ。俺は耐久戦だ」

 どんどん溢れ出てくる黒精霊に対してカルロスが不敵に笑ったその時、にじり寄って来ていた黒精霊たちの動きが一斉に止まった。

「なんだこの数は」

 カルロスの目の前でふわりと時空の歪みが生じ、そこから姿を現したセレットが驚きの声をあげ、続けて現れた男と女の二体の精霊も黒精霊たちを見て顔を歪めた。
 腰ほどまで緩やかに波打った薄紫色の髪を持つ女性の精霊がすっと前に出て、胸の前で手を組んで数秒後、女の精霊を中心に光の魔力が温かな波紋となって広がっていった。
 力の波に包み込まれた黒精霊たちにふたつの変化が起きた。闇の力が弱まった者は慌ててその場から姿を消し、そしてもう一方は、闇の魔力が完全に消し去られたことで、きょとんとした顔でその場に立ち尽くしている。

「黒精霊が、普通の精霊へと……戻ったのか?」
「その通りです。黒精霊は、精霊の成れの果ての姿ですから。ヴァイオレット様のご加護により、穢れは消え去ったのです」

 銀色の長髪の男性精霊はカルロスにそう話して聞かせつつ、女性の精霊、ヴァイオレットを誇らしげに見つめた。

< 193 / 229 >

この作品をシェア

pagetop