凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
エリンは腕に包帯を巻いた状態ではあるが、もうすでに完治したかのように、いつも通りテキパキと動き出した。
ルーリアはレイモンドにも謝りながら、カルロスたちがいるだろう居間へと戻っていく。その途中で女性の楽しげな笑い声が聞こえてきた。
そっと居間を覗き込むと、ソファーでブランケットの上にいるヴァイオレットと目が合って、「ルーリア、こっちこっち」と笑顔で手招きする。
「まだ横になっていた方がよろしいのでは?」
にこにこ笑っていても、顔色が優れないようにルーリアには見え、思わずそう声をかけると、銀髪の精霊がすぐさま同意する。
「ほらみろ、ルーリアさんだってそう言うんだ。大人しく寝ていろ」
「嫌よ。せっかく来たのだし、いろいろ見たいし、喋りたいじゃない。寝てるなんてもったいないわ」
「そんなことを言って。無理しないという約束を忘れたのか。お前に倒れられるとこっちも大変なんだぞ」
若い精霊ふたりのやり取りに耳を傾けながら、ルーリアはカルロスの隣まで進み行く。先ほど愛の告白をしてしまったからか、少し気恥ずかしそうな眼差しを向けてきたカルロスへと、ルーリアは小さく微笑みかけた。
「とりあえずこの状態ならいいでしょう? 私は大事な話をしに来たのだから」
ヴァイオレットは頬を膨らませると、椅子の背もたれに寄りかかり、ブランケットにくるまって顔だけ出すような状態となる。
「まずは自己紹介からしましょうか。私はヴァイオレット。そしてこちらは私の付き人のステイク」
「ヴァイオレット様は、精霊界の王の姫君様だ」
ヴァイオレットの説明だけでは足りないと感じたステイクがすぐさま補足し、カルロスとルーリアは揃ってヴァイオレットに対して首を垂れた。