凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 求めに応じてカルロスが馬を制して速度を落としてくれたけれど、広場を見渡しても、あの黒精霊の姿は見られない。
 続くように、エリオットや他の騎士団員たちもその場にとまったため、ルーリアは申し訳なく思いながら謝罪する。

「……いや、お手柄かもしれない。闇の魔力を薄ら感じる。どこだ」

 しかし、カルロスは表情を厳しくさせて、辺りを窺っている。それはエリオットも同様で、ルーリアの中にまた違った緊張感が顔を出す。

「なんだって! 少しも痛みが改善してないっていうのに、そんなに金を取るのか!」
「私は虹の乙女よ。妥当な金額です」

 噴水の近くから年配の男性の怒った声と、聞き覚えのある声が聞こえてきて、思わずルーリアはびくりと体を震わせる。

「アメリア」

 自らのことを「虹の乙女」と言うのはもちろんアメリアで、その後ろにはクロエラとディベルの姿もある。少し腰が曲がった男性の言葉から、アメリアが治癒行為が行い、高額な金額を要求したのだということが容易に想像ついた。
 男性へと、ルーリアと庭仕事を行なっていた老婆が近づいて、声をかけた。

「この子には関わらん方がいい。ジークローヴ公爵の若奥様を訪ねてみると良いよ。誰かと違って効果は抜群で、尚且つ謙虚でお優しい方だ」
「ちょっと待ちなさいよ。あなた今、私がルーリアに劣っているかのように言ったわね!」

 アメリアは老婆に掴み掛かり、そのまま苛立ちをぶつけるように突き飛ばした。よろけて倒れた瞬間、足首を痛めたらしく、老婆は顔を歪めたが、それでもアメリアを見上げて、はっきりと言い切った。

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