凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「虹の乙女という敬称は、あの子の方が似合ってる!」

 アメリアは怒りで唇を震わせた後、老婆に掴み掛かっていく。周囲から悲鳴が上がり騒然とするが、ディベルとクロエラは老婆の方が悪く叩かれて当然といった顔をし、アメリアを止めることなくただ眺めている。
 老婆は抵抗するが力が弱く、アメリアに良いようにやられている。足首の痛みも手伝ってか、逃げるどころか立つことも出来ない老婆の姿に、ルーリアは見ていられなくなり、馬を降りて走り出す。

「やめて、アメリア!」

 ルーリアがアメリアの腕を両手で掴むと、その声に反応するようにアメリアが肩越しにルーリアへと振り返る。

「ルーリアお姉様」

 アメリアは老婆から手を離すと立ち上がり、怒りを煮えたぎらせたような目でルーリアを睨みつける。

「全部お姉様のせいよ!」

 そして、怒鳴りつけながら力一杯ルーリアを後ろへと突き飛ばす。ルーリアは倒れそうになるが、素早く横からカルロスが手を伸ばし、しっかりと体を支えた。
 アメリアはカルロスを見て、一気に目に涙を溜めて訴えかける。

「カルロス様、聞いてください! この方達、私にひどいことを言って侮辱してくるんです」

 腕にすがりつこうとアメリアがカルロスに近づくが、カルロスは触られたくない様に身を引き、冷めた眼差しを向ける。
 アメリアはそれ以上近づくことはせず、悔しそうに唇を噛んだ。
 その様子をクロエラも不機嫌な面持ちで見つめていたが、ディベルはにっこりと嘘くさい笑顔を浮かべて、カルロスとルーリアに近づいていく。

「久しぶりではないかルーリア。カルロス君も一緒だな。新婚のふたりだ。仲が良くてよろしい」

 ディベルは周りに聞こえるように大きな声でそんなことを言う。そして、アメリアが何をしたかも忘れたかのように、座り込んでいる老婆に笑いかけた。

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