凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「これで、バスカイル家の評判は地に落ちたな」
これまで必死に隠していた恥が、ルーリアの告白により瞬く間に広がっていく。そしてバスカイルの地位の失墜を肌で感じて、ディベルは怒りで顔を赤くする。
「ルーリア、貴様!」
ディベルはルーリアの胸ぐらを掴み上げ、拳を振り上げる。反射的にルーリアは体を強張らせるが、振り上げられた手はしっかりと掴み取られた。
「良い度胸だな。俺の目の前で、俺の妻に暴力をふるおうとするなんて」
カルロスが声に怒りを滲ませて睨みつけると、ディベルは顔色を無くし、すぐさま後退りする。
安心させるかのようにカルロスから抱き寄せられたルーリアは、力強い腕の中でホッと息をついたのだが、次の瞬間、悔しそうに歯噛みし、こちらを睨みつけているアメリアと目が合った。
自分の中の闇の魔力が騒めき出した感覚に、ルーリアは思わずカルロスの腕を掴む。
「カルロス様、闇の魔力の気配がします」
「ああ」
ルーリアの囁きにカルロスは頷き、すぐにエリオットへと目配せをした。
どうしてもアメリアの様子が気になりながらも、ルーリアはカルロスの腕の中から、まだ立ち上がれないでいる老婆の元へと移動する。
「治癒をさせてください。嫌だとは思います。けどお願いです、少しだけ我慢してください。そして痛みが引いたら、皆さんと一緒にすぐにこの広場を離れて。周囲から闇の魔力を感じます」