凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 老婆の前に膝をついて必死にお願いすると、老婆から温かな微笑みが返ってきた。

「若奥様……嫌なもんか。私はあなたの人柄が好きだ。ぜひお願いする」

 ルーリアは目に涙を浮かべて、老婆の腫れ上がった足首へと両手をかざした。

(大丈夫。光の魔力を扱えるのだから、私にもできるわ。少しでも痛みを軽くできたらそれでいい)

 前にレイモンドが治癒行為を行った時の姿を思い出しながら、ルーリアは光を操る。もちろん闇の魔力が大きく反応しないように、力を抑えての治癒にはなったが、心配そうにルーリアと老婆を見守っていた人々は、徐々にルーリアの強い魔力に圧倒され始める。
 それはディベルやクロエラ、そしてアメリアも同様だった。
 輝きが消え、ルーリアが息を吐くと同時に、老婆が先ほどまでが嘘のように、軽々と立ち上がる。

「ありがとう……さあみんな若奥様の言葉に従って、ここを離れよう!」

 老婆はそう声をかけて、周囲にいる者たちを引き連れるようにして広場を離れていく。
 一気に騎士団員の姿が目立ち始めるが、その場から動かない者もやはりいる。ルーリアはどうしようと焦りを滲ませた時、部下のケントが広場に入ってきて、エリオットにこそっと報告し、何かを手渡した。
 そこでエリオットはにやりと笑って、ディベルに向かって動き出す。

「先ほど部下が、アズター・バスカイルの元を訪ねまして、ひどい怪我をされているのを発見しました。あなたがやったのですよね」
「なんのことだ」
「それから、個人の尊厳を無視した一方的な能力の搾取は禁じられています。ルーリアさんの件は、これからたっぷり調べさせていただきますね」

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