凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

(……よりによって、彼がカルロス・ジークローヴだなんて)

 馬車の中でアメリアの口から飛び出した名前と一致していることから、彼がその人だと断定する。同時にディベルに「黒精霊の気配に敏感だ」とか「死神公爵」などと言われていたのを思い出し、ルーリアの目の前が失望と共に暗くなる。

(ずっと会いたかったのに、彼は会ってはいけない人だったのね)

 俯きがちだった視線を上げた瞬間、ルーリアはカルロスと目が合い、ぎくりと息をのむ。
 自分を見つめる彼の眼差しが、何か探るような色合いを帯びているような気がしたからだ。このまま全てを見透かされてしまうのではと怖くなり、ルーリアが無意識に後退りした瞬間、カルロスが素早く距離を詰め、ルーリアの腕を掴んだ。
 カルロスは厳しい面持ちのまま、何か話しかけようとしたが、ルーリアの顔が青ざめていることに気づくと、「すまない」と呟き、慌てて手を離す。
 僅かに動揺している様子のカルロスへと、アメリアが「カルロス様」と近づこうとする。しかし、すぐさまアズターが、アメリアの動きを手で制しつつ、再び自分の背にルーリアを隠すように移動するとカルロスに軽く頭を下げた。


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