凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 ヴァイオレットが自分に向かってかざした小さな両手を驚き見てから、ルーリアは表情を引き締めて、自分の両手をぴたりと添わせる。
 ルーリアとヴァイオレットが目を瞑ると、二人の魔力が混ざり合い、一気に膨れ上がっていく。光は広場いっぱいに広がり、温かな風を巻き起こしながら弾け飛んだ。
 穢れ者や黒精霊たちから闇の魔力が取り祓われ、元の彼らへと戻っていく。
 怪我を負った人びとの傷が癒え、唖然する中、ルーリアとヴァイオレットは目を開け、見つめ合い、笑顔を浮かべた。
 心配で少し離れたところから広場の様子を窺っていた老婆が慌てて戻ってきて、キラキラと漂う光が七色に輝いているのに気がついて、「虹の乙女だ」とにこやかに呟いた。

 + + +

 それから一ヶ月が経った。
 カルロスと一緒にエリオットの執務室を訪れたルーリアは、エリオットに頭を下げた後、微笑みかけた。

「ありがとうございました。父親が、先日医院から家に戻れました。これからは自分たちで生成した魔法薬を、必要としている人たちに無償で配って、少しずつ罪を償っていくと言っていました」

「そうか」とエリオットは笑顔でルーリアを見つめるが、そんな視線を遮るように、冷めた顔のカルロスが間に割って入ってくる。

「ギードリッヒ一家の牢獄への収監手続き、早急にお願いします」

 残りの他の者たちも、翌日には全員見つけて捕まえたと、ルーリアはカルロスから聞いている。そしてルイス兄弟同様、カルロスの手によって魔力の核は壊され、みんな魔法が使えなくなったとも教えてもらった。
 これまで様々な魔法を操り恩恵を受けてきた者にとって、魔法が使えない状態は苦痛でしかない。しかも、収容先はアーシアンよりさらに北に位置し、極寒の脱出不可能牢獄として名が知られているところで、生きて出られることはないだろう。

< 221 / 229 >

この作品をシェア

pagetop