凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「おい、何をぼんやりしている。無事に用は済んだのだから今すぐ大広間から出るんだ……ああ、シャルード王子がいらっしゃった」
ディベルはアズターとルーリアへ当然の顔で言いつけたあと、大広間に姿を現したシャルード王子に視線を留め、少しばかり目を輝かせた。
カルロスの姿を探していたアメリアも、ディベルの言葉でシャルード王子の姿を見つける。白銀色の長髪を後ろで束ね、肌はとても色白。話しかけてくる貴族たちに向けられる眼差しは穏やかで温かいが、上品さの中に気高さもしっかりと感じ取れた。
ここまでカルロスばかりを気にしていたアメリアだったが、この国の貴族の娘なら誰もが憧れる王子を目の前にして表情を変える。一気に興味が湧いてきたらしく、「シャルード王子ともぜひお近づきになりたいわ」とまんざらでもないように口元に笑みを浮かべた。
一方、貴族の娘であっても、唯一の例外と言って良いルーリアは、ただぼんやりとシャルード王子の姿を目で追いかける。
(王妃様に雰囲気が似ていらっしゃるわ)
そんな感想を抱いた時、改めて「いつまでそうしている」といったような目をディベルに向けられ、反射的にルーリアは体を強張らせた。
その時、恰幅の良い貴族の男性に声を掛けられて、シャルード王子が足を止めた。男性が自分の傍にいる娘を王子に紹介するような素振りをみせたため、それを見たディベルの顔に焦りが浮かぶ。