凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「靴はサイズが合わなかったようだな。赤くなっている。すまない」
確かに感じていた靴擦れの痛みが、父の気遣いを受けた途端に和らいだように思え、ルーリアは「このくらい平気です」ともごもご呟きながら首を大きく横に振る。
「それではあまり歩きたくないだろう。グラッツのパイとジュースを取って来るから……あの辺りで待っていなさい」
壁際に視線を向けながらのアズターの言葉にルーリアは頷き、アズターが料理がたくさん乗ったテーブルへと歩き出すと同時に動き出した。
壁に軽く背中をもたれかけて、混雑している大広間を改めて見渡すものの、アズターの姿はもう見つけられない。
(社交界デビューなんて、しなくて良いと思ってた……けど来てよかった。今日は私にとって特別な日になったわ)
ルーリアはアズターの言葉を思い返しながら、幸福感で満ちていく胸に手を当てて、わずかに口元を綻ばせていると、目の前を警戒中らしき騎士団員がふたり通り過ぎていった。
そこでカルロスのことも思い出し、慌てて室内を見渡す。
(……カルロス様とも、もう会うことは叶わないだろうし、せめて最後にお姿だけでも)